それは それは大事に母親の介護をしていた娘さんから ある日、電話が来た。
「今朝、仕事から帰ると母が転んでいたんです。トイレに行く時に滑っちゃったみたいで・・・入院になりました(涙)。大腿骨頸部骨折です。あさって手術します。ちゃんと歩けていたのに・・・ 今まで転んだことなんかなかったのに😭大丈夫だろうと 安心しきっていた私がいけなかったの」
娘さんは、一度嫁に行ったが早くに離婚し戻ってきている。それからは、ずっと母親との2人暮らしだ。
毎朝、母親がまだ休んでいる時間帯に得意な料理の腕を生かし2時間程施設の調理場で働いている。仕事は趣味の延長みたいなもの。好きな料理を作ってお金がもらえるんだものこんなにありがたいことはないわといつも話していた。
失禁するようになってから外に出るサービスの利用を嫌がり 頑なに拒み続けている母親の為、訪問リハと入浴のサポートが週2回入るだけであとは何もない。
常に母娘 2人きりだ。だから娘さんが仕事で家を空けることは、この2人にとって大きな意味がある。
良好な親子関係を保っていくためにも必要だ。
お母さんは、リハビリを頑張られて最近は、だいぶ足の力がついてきていた。膝折れすることもなくなり、一人でのトイレまでの移動は安定して出来るようになっていた。
何があっても転倒だけは避けたい。転倒骨折から寝たきりになる人が多いからそれだけは気を付けたい。いつもそう話していた娘さんでその為にできる対策は日頃からしていたし、トイレまでの移動動線上にも途切れることなく手すりを配置するなどして気を配っていた。それでも手すりをつかみ損ねて転んだのだ。
「私がちゃんと見ていなかったせいよ。このまま寝たきりになっちゃったらどうしよう・・。入院中にボケちゃうかもしれない。あゝ 私のせいで・・・😭仕事なんかしないで母のそばについていれば良かった」そう言って後悔しきり。
✨✨✨✨✨
あのね〜🌀十分気をつけていても転倒事故というのは、ある一定の割合で起こってしまうものなのよ。とくに高齢者の場合は、どんなに対策を立てたとしても完全にゼロにはできないの。
例えば・・・段差を踏み外したり、足がもつれたり、急な意識の低下があったり、若い人とは違って転倒要因ならいくらでもあるのだ。数え出したらきりがない。
だから、あれだけ注意していたのに・・・とか
こうしておけば良かったかも・・・とか
自分を責めたり後悔することはないんだよ。
不可抗力なんだもんしょうがないの。誰のせいでもないと話した。
娘さんは、鼻をすすりながらうんうんと頷いていたが、あまりにも自分を責めていた。これでは、お母さんが元気に退院してきても自信をもって介護をすることができなくなってしまう可能性がある。だから、何とか考え方を切り替えて少しでも前を向いて欲しいなと思った。
起こってしまったことについて後から色々と考えてみたところで過去には戻れないのだから・・・。
多くの場合、高齢者の入院は、それ自体が”害”になる。入院関連機能障害(HAD)という言葉があるくらいだ。
入院すると疾患自体は良くなっても体力や筋力、認知機能などは低下しがちなので全体としては弱るものだ。
寝たきりで安静に過ごしていたら当たり前だ。
圧迫骨折くらいなら家で治す。自分の親ならそうする。
高齢者の入院は覚悟が必要なのだ。
でも、このお母さんなら大丈夫。10年も付き合っていれば分かる。だからあたしは何も心配はしていなかった。
予想通りだった。医者がそばにいると思うだけでメンタルが落ち着くタイプ。このお母さんにとって病院は何よりも安心な場所なのだ。白衣🥼の力ってある意味凄い。コミュ力なんかたいしたことないくせにすんなり患者に「はい」と言わせリハビリでは120%の力を出させるのだから(笑)。
何はともあれ・・92歳、手術を受け無事に自宅に退院した。
万歳🙌 万歳🙌手すりにつかまり横へのカニ歩きができるまでに復活していた。さすがだ。わざわざ歩いてみせてくれた。
「ドヤ顔」が素敵すぎて目に焼き付いているよ💖
こういう瞬間が好き。心から良かったなと思う。
娘さんの笑顔も、一段と輝いていた。
おせちは、いつも娘さんの手作りなんだって。
いいなー 美味しいだろうな〜きっと。
良い年をお迎えください。
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