いつものように、川沿いを歩いていました。
慣れた散歩道です。
澄んだ水の中を、黒い鯉がゆったりと泳いでいます。
ここを歩くと、頭の中のあれこれが、すーっと飛んでいくのです。
その日、向こうから歩いて来たおば様方が立ち止まり、川をのぞき込んでいました。
視線の先には中学生の姿。
網を持って、鯉を捕まえています。
ナマズもいるらしいのです。
「鯉は煮て食べるんですって」
「ナマズは天ぷらにするらしいわよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は心の中でつぶやきました。
——え、時代は変わったの?
でも、すぐに思い直します。
昔の日本では、川魚は普通に食べられていました。

川の恵みは、暮らしの一部だったはずです。
「あの子たちの親は、日本人じゃないんじゃない?」
その無遠慮な決めつけが、矢のように耳に飛び込んできました。
血って、そんなに単純なものなのでしょうか。
文化は混ざり、
食も混ざり、
人も混ざってきました。
それなのに、人間だけが、勝手に線を引く...。
私は川を見ました。
泥の中のナマズの姿を、少しだけ探してみます。
黒い鯉は、澄んだ水の中を変わらず泳いでいました。
「逃げて!」とほんの一瞬、思いました。
それだけのことです。
ウォーキングの足は止まりません。
私の中の「当たり前」が、少しだけ揺れた午後でした。
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