ある日、Sさん(85歳男性)のご家族から相談があり、私は彼の自宅を訪れました。
Sさんがデイサービスに通う話を進めたいとのこと。
早速、Sさんに会ってみました。
彼の部屋に足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできたのは…なんと、本格木製模型!
あの「日光東照宮 陽明門」の作りかけ😅。
Sさんとお話をする中で、彼の大きな夢が「陽明門を完成させること」だと判明。
しかし、模型はなんと一年位前から途中で止まったままだとか。
Sさんに質問を投げかけると、彼はしばらく考え込む。
話があちらこちらに飛んでいって、遠くのほうからぐるーっと回って戻ってくる感じ。
ようやく答えにたどり着くまで、こちらも一緒に頭の体操をしているような気分になります(笑)。
まとめてしまえば簡単な話しなのですが、実際にはなんとも・・・面接にかなり時間がかかるタイプでした。
Sさんの話し方を観察しているうちに、「これは認知症というより、むしろ器質的というか・・・知的な側面による影響が強いのかな?」と思いました。
でも、Sさんなりの“哲学的な遠回り”は、その過程で思いがけない言葉が飛び出してきたりして、こちらも聞いていて楽しくなります。
彼の人柄がにじみ出る味わい深いものでした。
ご本人のたどたどしい話を簡単にまとめると、「陽明門の作り方が分からなくなってしまった」そうなのです。
この陽明門キット、値段がすごいんです。
Sさん曰く、なんと**約、8万円!**その額を聞いた瞬間、「おお、これは夢のプロジェクトになりそうだ!」と思わずニヤけてしまいました。
私は提案してみました「Sさん、デイサービスに通いながら、この陽明門作りを再開してみませんか?スタッフさんもきっと手助けしてくれますよ!」と。
するとSさんも家族も、この提案に大賛成。
特にSさん本人が喜んでやる気を示してくれたのでホッとしました。
近くに住む息子さんは、父親の様子をよく見に訪れていたそうですが、模型が進んでいないことには特に変だとは思わなかったようです。
「もっと早く認知症のサインに気づいてやれれば」と少し後悔している様子でした。
でも、私は思うのです。
認知症の方は、小さなことまで指摘されるのが苦手ですし、介護者には少し鈍感力が必要なこともあります。
その点、男性介護者は靴下の柄が左右で違っていても気にしなかったりして(笑)。
少し例えが極端だったかもしれませんが、実際にいるんです。
まぁ、そういう大らかさも必要ってことです。
さて、これからSさんはデイサービスに通いながら、再び陽明門の組み立てに挑みます。
新たな出会いや経験が、彼の人生にどんな彩りを加えるのか楽しみです。
そして、何よりもSさんの表情が、デイサービスに通うことでどんどん生き生きとしていくことを期待したいです。
私たちチームは、Sさんの夢を大切にし、これからも豊かな人生を送るためのお手伝いを続けたいと思います。
要介護1ですし、まだまだ社会性を維持できそうです。
QOL(生活の質)にもこだわって関わることができます。
次回は「陽明門、ついに完成か!?」でまた続きを書きたいと思います。
お楽しみに…なんちゃって😜(笑)
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